難解な情報をシンプルに伝えるマトリクス表とは?種類や書き方を分かりやすく解説
マトリクス表(マトリックス図)とは、行と列によってデータを整理し、視覚的に表現する ためのチャートの一種です。
ビジネスの分析において、複雑なテーマを扱うことがよくあります。
そのような際、汎用性の高さから頻繁に使用されるのがこのマトリクス表です。
何かの結果を他者に説明する際、テキストでの説明は論理的であっても、複雑な内容を簡単に 理解してもらうのは難しい場合があります。
こうした場合にマトリクス表を用いることで、分析結果を直感的に理解しやすく可視化する ことが可能です。
一方、マトリクス表を正しく作成し、効果的に活用するためには、マトリクス表の作成方法や その利点を理解しておくことが重要です。
この記事では、マトリクス表の基本的な概要や種類、具体的な活用事例、その利点、 そして効果的な作り方について詳しく説明します。
また、マトリクス表の作成はエクセルなどを活用することもできますが、miroのテンプレートを 活用することでさらに便利に作ることができる方法についてもご紹介します。
情報を整理し、視覚的に伝える力を持つマトリクス表を活用することで、複雑なデータも 明確に伝えるようにトライしてみましょう。
マトリクス表(マトリックス図)とは?
マトリクス表(マトリックス図)は、データや情報を「行」と「列」で整理する縦横に 広がるチャートです。
この表現手法は、元々「基盤」や「鋳型」を意味する英単語「マトリクス」から来ており、 数学では「行列」を指します。
この考え方がビジネスの世界に取り入れられ、複数の要素を規則正しく配置した図や表を 意味するようになりました。
マトリクス表は縦軸と横軸に異なる要素を設定し、その交点に関連するデータを配置する ことで、複雑な情報をわかりやすくまとめます。
例えば、マーケティングの分野では、様々な要素を軸に配置し、交点に数値やテキストを 挿入して、要素間の関係性を明確にするために使われます。
この手法は、問題解決に役立つための要素や手段を整理し、それぞれの関連性や評価を 視覚化することで、意思決定をサポートします。
マトリクス表は、視覚的に情報を整理できるため、ビジネスやコンサルティングの場面で 広く活用されています。
特に、2x2マトリクスはシンプルで理解しやすいため、複雑なデータをシンプルに整理する のに役立ちます。
マトリクス表はマーケティングにおいて特に効果的に活用される場面が多くあります。
現状の把握、戦略的な意思決定、問題解決、市場分析、自社の強みと弱みの評価、顧客の ニーズの発見など、様々なビジネスシーンで役立ちます。
例えば、SWOT分析やBCGマトリクスなど、多くのビジネスフレームワークにおいても、 基本構造としてマトリクス表が使用されています。
つまり、マトリクス表は情報を整理し、視覚的に理解しやすい形式で提示するための強力な 基本ツールです。
これにより、ビジネスにおける効果的な意思決定をサポートすることができるのです。
マトリクス表をつくるメリット
マトリクス表をつくるメリットは大きく5つあります。
全体像を俯瞰できる
漏れのない要素洗い出し
優先順位の明確化
関係性の発見とグループ化
複雑な情報を簡潔に伝達できる
それぞれを詳しく見ていきましょう。
1. 全体像を俯瞰できる
マトリクス表を活用すると、情報を俯瞰して把握することができます。各要素の位置付けが 明確になり、全体の構造が一目で理解できるため、単にリスト化した情報では見えにくい 相対的な関係性も把握しやすくなります。
これにより、複雑なデータを整理し、効率的に意思決定を行うことが可能になります。
例えば、プロジェクトの全体進捗やタスク配置を視覚的に整理することができ、戦略の見直し やリソース配分が行いやすくなるなどの活用例があります。
2. 漏れのない要素洗い出し
マトリクス表は、設定した軸に基づいて情報を網羅的に整理するのに適しています。
例えば、SWOT分析のフレームワークを使うことで、重要な要素をすべてリストアップする ことができます。
これにより、見落としがちな要素も含めて包括的な分析が可能になり、より正確な戦略策定に 繋がります。
結果として、必要な要素をもれなく洗い出すことができ、深い洞察を得ることができるのです。
3. 優先順位の明確化
マトリクス表を使うことで、要素の重要度や優先順位を直感的に把握することができます。
各要素の位置付けが明確になることで、どのタスクや項目が重要であり、優先的に対応すべき かを判断しやすくなります。
例えば、緊急度と重要度のマトリクスを利用すると、迅速な意思決定が可能となり、重要な タスクに集中することを可能にします。
結果として、効率的な作業計画を立てることができ、プロジェクトの成功率の向上が期待 できます。
4. 関係性の発見とグループ化
マトリクス表は、要素間の関連性を見つけ出し、それらをグループ化するのに役立ちます。
例えば、顧客の購買行動と満足度をマトリクスにプロットすることで、特定のパターンや グループを発見できます。
これにより、同様の属性を持つ顧客をターゲットとしたマーケティング戦略を策定することが できます。
結果として、データに基づいた分析が進み、効果的な戦略立案をサポートします。
5. 複雑な情報を簡潔に伝達
マトリクス表は、複雑な情報を簡潔に整理し、視覚的に伝えるのに非常に有効です。
テキストでは伝えにくい情報も、マトリクス表を用いることで一目で理解できるようになります。
例えば、プレゼンテーションや報告書にマトリクス表を組み込むことで、受け手が情報を ひと目見ただけで把握でき、理解しやすくなります。
これにより、効率的なコミュニケーションが促進され、関係者全員が共通の理解を持つことを サポートします。結果として、議論や意思決定をスムーズに進めることができるのです。
マトリクス表の種類
マトリクス表の種類は基本的なものが大きくわけて3つあります。
L型マトリクス
4象限マトリクス
マッピングマトリクス
それぞれを詳しく解説していきます。
L型マトリクス
L型マトリクスは最も基本的な形式の一つで、縦軸と横軸にそれぞれ要素を配置し、交点に 具体的な情報を埋め込んでいくシンプルな構造を持っています。
この形式は非常にわかりやすく、多くのビジネスシーンで活用されています。
例えば、製品の機能と顧客のニーズを一覧で示す際に使うことで、どの機能がどの顧客ニーズに 対応しているかが一目でわかります。
L型マトリクスはその直感的なレイアウトから、初心者でもすぐに理解できるため、会議資料や プレゼンテーションなどで広く使用されています。
この2軸L字型のマトリクスの発展として3軸で整理したT字型の表などもあります。
軸が増えるため複雑性が増しますが、真ん中の軸を中心に左と右のL型マトリクスを組み 合わせた形で情報整理をすることができます。
4象限マトリクス
4象限マトリクスは、2つの異なる評価軸を用いて情報を4つの象限に分ける手法です。
例えば、緊急度と重要度の2軸を設定し、それぞれの象限にタスクを分類することで、 優先順位を視覚的に整理できます。
これにより、どのタスクを最初に処理すべきかが明確になり、効率的なタスク管理が可能と なります。
また、マーケティング戦略を策定していく時には、顧客セグメントを市場シェアと成長率の 軸で分類し、どのセグメントに注力すべきかを判断することに役立ちます。
4象限マトリクスは、情報を簡潔に整理し、意思決定をサポートする強力なツールです。
マッピングマトリクス
マッピングマトリクスは、2つの軸に基づいて要素を自由に配置する形式で、特定の要素間の 関係性や分布を視覚的に示すのに適しています。
例えば、市場分析では、市場成長率と市場シェアを軸にして製品やサービスを配置し、 市場ポジションを明確に把握することができます。
この方法は、要素の分布を視覚的に理解しやすくし、潜在的な機会やリスクを早期に発見する のに役立ちます。
また、組織内の役割やプロジェクトのステータスを視覚化するためにも有効です。
マッピングマトリクスは、データを直感的に理解しやすくするための強力なツールです。
マトリクス表の活用事例
マトリクス表は情報整理の「やり方」なので、それを活用したビジネスでよく使われる フレームワークについても連動させてご紹介します。
マトリクス表の種類での解説と重なる点もありますが、以下の3つが挙げられます。
L型マトリクスを活用するSWOT分析
4象限マトリクスを活用する重要度・緊急度マトリクス
マッピングマトリクスを活用するPPM分析
各種のフレームワークを見てみましょう。
SWOT分析
SWOT分析は、ビジネスやプロジェクトの現状を把握するためのフレームワークで、 「強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」「機会(Opportunities)」「脅威(Threats)」 の4つの要素を整理します。
内部環境(強みと弱み)と外部環境(機会と脅威)の2軸で構成され、各要素を L型マトリクス表に配置して視覚的に分析します。
例えば、強みには自社の技術力やブランド力、弱みには資金不足や人材不足が含まれます。
機会としては市場の拡大や新技術の導入、脅威としては競争の激化や規制の変更などが 挙げられます。
L型マトリクス表を使うことで、これらの要素を一目で把握しやすくし、戦略立案に役立てる ことができます。
▼ 関連ページ 市場分析に役立つSWOT分析とは?目的や使い方について簡単に解説
重要度・緊急度マトリクス
重要度・緊急度マトリクスは、タスクやプロジェクトの優先順位を決定するためのツールです。
考案者の名前から「アイゼンハワーマトリクス」とも呼ばれ、重要度と緊急度の2軸に 基づいて4つの象限に分類されます。
重要かつ緊急なタスクは第一象限に配置され、即対応が必要です。重要だが緊急でない タスクは第二象限に入れ、計画的に取り組むべきと判断されます。
緊急だが重要でないタスクは第三象限に配置され、可能ならば他者に委任します。
重要でも緊急でもないタスクは第四象限に分類され、削除や後回しにします。
この4象限マトリクスを使うことで、効率的な時間管理とリソース配分を可能にし、 優先すべきタスクを明確にできるのです。
PPM分析
PPM分析(プロダクトポートフォリオマネジメント)は、複数の事業や製品ラインを評価し、 経営資源の最適な配分を判断するための手法です。
市場成長率と市場シェアの2軸で構成され、4つのカテゴリー「花形(Star)」「問題児 (Question Mark)」「金のなる木(Cash Cow)」「負け犬(Dog)」に分類します。
花形は高成長市場で高シェアを持ち、投資価値があります。問題児は高成長市場だが 低シェアで、成長のためには多大な投資が必要です。
金のなる木は低成長市場で高シェアを持ち、安定した収益源です。
負け犬は低成長市場で低シェアのため、撤退やリソース再配分の候補となります。
このマッピングマトリクスを用いることで、事業ポートフォリオのバランスを保ち、 経営戦略を効果的に策定できます。
▼ 関連ページ 自社ビジネスの未来を客観的に判断できるPPM分析とは?
マトリクス表の作り方
PPM分析は以下の5つのステップで行います。
ステップ1: 目的を決める
まず、マトリクス表を作成する目的を明確に設定します。目的は、例えば事業戦略の整理、 プロジェクトの現状把握、優先事項の決定などです。
目的が明確になることで、必要な情報や適切な整理方法が見えてきます。
これにより、マトリクス表が具体的な成果を導くためのツールとして効果的に機能します。
目的の設定は、全体の方向性を定めるために不可欠です。
ステップ2: マトリクス型を選択する
次に、目的に最適なマトリクス型を選びます。
代表的なものにはL型マトリクス、4象限マトリクス、マッピングマトリクスがあります。
L型は詳細な分析、4象限は位置関係の視覚化、マッピングは数値データの直感的理解に 適しています。
選ぶ型によって情報の見せ方が変わるため、目的に応じた適切な形式を選択することが重要です。
ステップ3: 要素を配置するための軸を定める
マトリクス型を選んだ後は、要素を配置するための縦軸と横軸を設定します。
例えば、SWOT分析では内部要因と外部要因、プラス要因とマイナス要因を軸にします。
軸を適切に設定することで、情報の整理や分析がしやすくなります。
軸の設定はマトリクス表の基盤となるため、テーマに最も関連性の高い項目を選びましょう。
ステップ4: 要素を書き出し配置する
軸を決めたら、それに関連する要素を洗い出してマトリクス表に配置します。
最初は多くの要素を書き出し、徐々に削って整理していくことで抜け漏れを防ぎます。
要素の配置は、他の要素との関連性を考慮しながら行いましょう。
これにより、比較や分析がしやすくなり、視覚的な理解も向上します。
ステップ5: キーメッセージを決める
最後に、マトリクス表を通じて伝えたい主要なメッセージを一つに絞ります。
例えば、「A市場が最重要」「Bプロジェクトにリソースを集中すべき」など、シンプルで重要な メッセージを選びます。
明確なメッセージがあることで、マトリクス表は具体的な行動や意思決定に結びつきやすく なります。
マトリクス表の作成を行うにはMiroがおすすめ
オンラインワークスペースであるMiroでは便利なツールや無料のテンプレートを活用する ことで、マトリクス表の作成をスムーズに行うことができます。
Miroボード内では、複数のメンバーがリアルタイムで同時に作業できるため、チーム間で 共有をしながらマトリクス表の作成に必要な要素の書き出しを行ったり、確認しコメントを 残してもらったり、進捗を共有しながら計画的に進めることが可能です。
また、マトリクス表と組み合わせることができるその他のフレームワークもMiroの 無料テンプレートとして用意されているため、より発展的な分析を簡単に行うことができます。
Miroを上手に活用しながら、マトリクス表の作成と活用を効率的に行いましょう。
以下のリンクから製品・テンプレートページをご確認いただけます。
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