プロセス改善に役立つ BPMN とは?書き方や 例を紹介
BPMN(ビジネスプロセスモデリング表記法)はビジネスプロセスの全体像を可視化することに便利な図の 1 つです。
1 つの図だけですべてのプロセスを管理し見える化することで、ビジネス上の無駄をなくし、プロセスを効率的に改善することができます。
BPMN とは?
BPMN(ビジネスプロセスモデリング表記法)とはビジネスプロセスの全体像を可視化するための図です。プロセス内の機能や内容、成果物を可視化するためにプロジェクトマネージャーやビジネスアナリストによってよく使用されます。
BPMN を作成することでビジネスプロセスを明確に理解し、チーム内のコミュニケーションを改善することができます。
また、BPMN はフローチャートの一種であり、ビジネスプロセスのさまざまな要素や流れを標準化されたアイコンや記号で表現したものです。
BPMN が作成された経緯
BPMN の起源は 2004 年に BPMI(Business Process Management Initiative)が初めに開発したことにあります。その翌年、BPMI はコンピュータ業界の標準化コンソーシアムであるOMG(Object Management Group)と合併しました。
両社は共に、BPMN(ビジネスプロセスモデリング表記法)と記号やアイコンの説明、および作成方法を含む仕様書を発表したのです。
その後の 2011 年に OMG が BPMN 2.0 を発表し、ビジネスプロセス構築に役立つビジネスフレームワークとしてこの形式を提唱するようになりました。この形式にはビジネスプロセス図を作成するための記号や記法がより詳細に含まれています。
BPMN の種類
BPMN で使用される記号は「フローオブジェクト」「オブジェクトの接続」「アーティファクト」「スイムレーン」の 4 種類に分類されます。
各記号にについて下記で詳しく見ていきましょう。
フローオブジェクト
BPMN のフロー記号はプロセスの流れを表現することに使用される記号です。BPMNのフロー記号には以下のものを使用することができます。
イベント
「イベント」はプロセスの中で発生するアクションのことを指します。
例えば「注文の確認」や「入金の確認」などは、出荷や配送のプロセスの一部を表します。また、イベントは円形を使用して表現されます。円の中にはそのイベントが意味することをさらに説明するアイコンが入っていることもあります。
例えば「入金」のアクションが発生する場合、コインや紙幣のアイコンを使用して表現されることがあります。
アクティビティ
「アクティビティ」は BPMN では丸みを帯びた長方形の記号を使用して表現されます。例えば「製品を梱包する」、「出荷を追跡する」などアクションを必要とするプロセスを表しています。アクティビティには、タスクやさまざまなサブプロセスも含めることが できます。
オブジェクトの接続
これはオブジェクトどうしがどのように関係し、あるアクティビティから次のアクティビティへどのようにプロセスが流れるかを表現するための接続線と矢印のことを指します。以下でいくつかの接続オブジェクトについて見ていきましょう。
シーケンスフロー
シーケンスフローでは線と矢印を使用してアクティビティの順序を表します。また、これらの線はワークフローどうしの関係を見える化し、プロセスを進行するためにどのタスクを実行しなければならないのかを示します。
メッセージフロー
メッセージフローは左側に丸の付いた点線の右向き矢印で表現されます。この線は図の中のイベントやアクティビティがワークフロー内でどのようなにオーバーラップするかを表現するために使用されます。
例えば、「顧客が注文した」というのは、注文プロセスのイベントとして見ることができますが、出荷・配送プロセスの開始である可能性もあります。これは、2 つのプロセス間の境界に存在しており、メッセージフローで使用する線はこの境界線を明確化することに役立ちます。
関連
「関連」の接続線はテキストやデータ、成果物、フローオブジェクト間の関係を表しています。関連は点線を使用して表現されます。
アーティファクト
「アーティファクト」はビジネスプロセスを補足するための情報として使用されます。アーティファクトはプロセスの要素を記述することを可能にし、タスクの分類と整理に役立ちます。
以下でアーティファクトがどのようなケースで使用されるのか見てみましょう。
データオブジェクト
データオブジェクトはデータの出入力を表現することに使用されるます。また、プロセス内のデータストレージを表現する時にもデータオブジェクトが使用されます。これらのアイコンはデータの種類によってさまざまな形式が存在します。
グループ
グループアイコンはその名が示すようにプロセスにおける重要性に基づいて項目をグループ化するものです。図では、角の丸い長方形に破線が入った図形を使用して表現されます。このアイコンは図の情報を整理したい時に役立つアイコンです。
テキスト注釈
テキスト注釈とは図内のオブジェクトに関する追加情報として追加されるテキストのことを指します。このテキストではプロセスの特定の部分を説明したり、追加のコンテキストを表示したりなど、オブジェクトフローをより詳細に説明することができます。このようなテキストを使用することで、図をより分かりやすくすることができます。
スイムレーン
スイムレーンは BPMN において重要な部分です。一般的には水平の長方形でプロセスのさまざまな段階を区切ります。スイムレーン図テンプレートを例として、この図がどの ように構成されているのか見てみましょう。
このテンプレートは 「顧客」「販売」「在庫」「支払い」の 4 つのスイムレーンで分割されています。この行の中の各項目はビジネスの特定の領域を示しています。
スイムレーンは図をさらに分解し、どのチームや部門が特定のタスクやオブジェクトを担当しているのか可視化することに役立ちます。
例えば、支払関連のオブジェクトはすべて「支払」のスイムレーンに配置されます。その結果、支払のプロセスを担当するチームがビジネスプロセスの中で自分たちのタスクがどこに位置するかを簡単に確認できるようになります。
BPMN を使用するメリット
このセクションで BPMN(ビジネスプロセスモデリング表記法)を使用する主なメリットについて見てみましょう。
認識合わせに活躍
BPMN を使用することでビジネスプロセスに対しての認識共有を行うことができます。それにより、チームでワークフローの全体像を共有することができ、効率的にプロジェクトを進められるようになります。
プロセスを標準化できる
BPMN で記号を使用することで、プロセスの明確化を実現することができます。BPMN を使用することで業務がどのように行われるかを正確に理解することができ、生産性の向上を図ることができます。
改善点を特定できる
BPMN を使用することでビジネスプロセスにおいての課題やボトルネックを特定することができ、プロセスの改善に情報を活用することができます。
部門の垣根を越えた共同作業が可能
BPMN を使用すれば部門間のプロセスを効率的に管理することができます。明確なプロセスを設定し、部門間ですり合わせを行うことで、確実な意思決定を行うことが可能になります。
BPMN と UML の違い
BPMNとUML(統一モデリング言語)の大きな違いは、その活用目的にあります。
UML 図がソフトウェアのモデル化にされるのに対し、BPMN はビジネスプロセスの全体像を可視化することに使用されます。つまり、UML 図が IT システムの開発に特化しているのに対し、BPMN は IT とビジネスの両方に広く運用できる図であるということです。
しかし、BPMN と UML 図にはいくつかの共通点も存在します。例えば、どちらも標準化されたシンボルと表記法を使用し、システムやプロセスを表現するためにフローチャート形式を採用していることです。
BPMN の作り方
ここまで BPMN とは何かについて説明しました。では、Miro を使った BPMN の作り方について見ていきましょう。
1. テンプレートの使用
BPMN テンプレートを使用することで簡単に図の作成を開始することができます。テンプレートは自由に編集することができ、プロセスを表現するために図形を移動したり、新しい図形を追加したりなど簡単に実行することができます。
BPMN を一から作りたい場合は BPM 図作成ツールを使用して図を作成することも Miro では可能です。
Miro はビジュアルコラボレーションスペースとしてビジネスチームを支援します。オンラインホワイトボードツールを使用することでチームの誰もがどこにいてもボードにアクセスすることができ、共同で BPMN を作成することができます。
2. 目的を選定する
BPMN の作成を始める前に、プロセスの目的を決める必要があります。目的ではプロセスが何のためにあり、どのように進められるべきかを説明できるようにしましょう。
採用活動のためのプロセスなのか、出荷・配送のためのプロセスなのか、顧客対応プロセスなのか、目的を明確にすることでスムーズに図を作成することができるようになります。
ここでは、BPMN の目的に記載される内容をご紹介します。
プロセスのスタート地点
プロセスの終了地点
プロセスの内容
プロセスから排除するもの
成果物や目標
目的を明確化することでよりわかりやすい BPMN を作成することができるようになります。
3. アクティビティを追加する
目的を決定した上でビジネス活動の順序を計画することができるようになりました。
最初のステップは、開始イベントを決定することです。ここでは図を開始する正確なアクティビティを特定することができます。また、最終イベントを追加して、プロセスがいつ終了するかを確認することができます。
そうすることで、今後のアクティビティも計画できるようになります。
開始イベントから、プロセス内を移動し、主要なアクション、タスク、およびアクティビティを追加します。適切な記号やアイコンを使用するために、上記でご紹介した BPMN の 4 種類の形式からシチュエーションに合ったものを選択しましょう。
ここでは、BPMN図にアクティビティを追加して構造化するためのコツをいくつか紹介します。
図を作成する際は図がすべて 1 ページに収まるようにしましょう。そうすることで誰もが図を確認しやすくなり、プロセスを一目で把握することができます。
アクティビティを図に追加することで非効率なプロセスを洗い出すことができます。その場合、コメントや付箋に問題について記載し、今後のレビューで確認できるようにしましょう。
シーケンスフローは水平方向に、関連とデータフローは垂直方向に移動させるようにしましょう。ここではスイムレーンを使用することができますが、これについては次のセクションで詳しく説明します。
4. スイムレーンのアウトラインを記入する
各 BPMN には少なくとも 1 つのスイムレーンが必要です。そのスイムレーンをどのように構成するかは、シチュエーションによって柔軟に変更しましょう。最終的には、マッピングするプロセスや関係者次第で変わります。
ここでは、スイムレーンの構成に使える主なカテゴリーを紹介します。
部門
全社的なプロセスを作成する場合、スイムレーンを使用して特定のタスクやアクティ ビティを担当する部門を示すことができます。たとえば、支払い関連のすべてのタスクは経理チームのスイムレーンに配置することができます。
従業員
プロセスが特定のチームや部門に関連している場合、スイムレーンを従業員ごとに 分割することができます。プロセスに関与するすべての従業員が自分の責任領域と 自分の役割がプロセスにどう関わっているかを明確に把握できるようになります。
アクティビティの種類
従業員や部署ごとにタスクを分類したくない場合は、スイムレーンを使って類似する アクティビティをグループ化することができます。例えば営業タスクは「営業」スイム レーンに分類されます。
5. 接続線の使用
最後に接続線と矢印を使ってアクティビティが互いにどのように関連しているかを示すことができます。
流れの方向は常に左から右へ移動すること。スイムレーン間を移動する場合(つまり、矢印と接続を垂直に使用する場合)でも、図の流れは一貫している必要があります。
こうすることで、プロセスがどのように機能し、どのアクティビティが互いに関連しているかを理解しやすくなります。
また、接続線どうしが交差しないようにしましょう。交差している場合は、アクティビティの構成を変更する必要があります。しかし、左から右への単純なフォーマットに従っていれば、この問題は発生しません。
6. 図を共有する
図が完成したらチームメイトや関係各所と図を共有し、フィードバックや意見を集めましょう。
チームで図を確認しコメントや変更すべき内容を追加します。そうすることで、いつでもフィードバックの内容を確認し、必要な変更を加えることが可能です。
時間の経過とともに、プロセスも変化していきます。新しいタスクが追加されたり、新しいツールやシステムが導入されたり、新入社員がチームに加わるなどの変化があった場合、常に図を更新するようにしましょう。