データフロー図とは? 書き方や記号について 簡単解説
データフロー図はプロセスやシステムにおけるデータの流れを視覚的に表現したものです。
この図はソフトウェアを設計する際によく用いられますが、ビジネスに応用できる図であり、組織内のプロセスやシステムの改善にも役立ちます。
データフロー図とは?
データフロー図はプロセスやシステム内の情報、フローを図にしたものです。この図ではプロセスを正しく実行するために必要なさまざまなフローや動作を表す記号を使用します。この図は表現しているシステムの複雑さによって形を変えますがデータフロー図作成ツールを使用することにより、簡単に作成することができます。
データフロー図は、ビジネス情報システムにおけるデータの流れを視覚的に表現するために最もよく使用されます。以下のデータフロー図の例で示すように、これらの図は、一連の入力と出力を使用して、システム内でデータがどのように処理されるかを示しています。
データフロー図は、その名前が示すように、データと情報に焦点を当てた図です。これは、企業内の他のプロセスやシステムに焦点を当てることができるワークフロー図やフローチャートとは異なるものです。
フローチャートとデータフロー図を見分ける際のポイントは矢印の使い方にあります。フローチャートの矢印はフローの順序を表しますが、データフロー図の矢印はデータの流れを表しています。
データフロー図は、データがどのポイントから送信され、システム内で処理され後、どこに行くのか理解することに役立ちます。
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データフロー図のメリット
データフロー図はシステム内の機能やプロセスをビジュアルを使用して表現し、情報の取得、保存、操作に役立てるものです。この視覚的な表現は、ユーザーとシステム開発者間のコミュニケーションに役立つツールです。ここでは、データフロー図のメリットをより詳しくご紹介します。
各システムごとの分析
データフロー図はシステム内の構造を明確にするのに役立ちます。データフロー図を使用することにより組織内でのシステムの各構造ごとに焦点を当てられるため、既存の状態を簡単に理解できるようになります。
コミュニケーションの改善
データフロー図はシステム設計者とユーザーとの間のコミュニケーションを促進することに役立ちます。それによりエンジニアや開発者がユーザーのニーズや体験を理解することができるようになります。
ビジュアルツール
複雑なデータ構造をシンプルなデータフロー図で表現することで、図の解釈が容易になります。データフロー図は、ソフトウェアシステムのプロセスに関わるデータと手順をチームが視覚化するのに役立ちます。
ロジックの表現
データフロー図を使用することでシステム内のデータの流れの背景にあるロジックを表現することができます。ロジックを視覚的に表現することにより、技術的な知識のない人でも入力データがどのように出力データに変換されるのか簡単に理解できるようになります。
データフロー図の記号
データフロー図では構成要素を示すために使用される記号のセットが存在します。これらの記号を使用することでチームの全員が図を理解することが容易になります。以下でその記号を見ていきましょう。
データの源泉と吸収(外部要素)
「データの源泉と吸収(外部要素)」とは外部組織や人、コンピュータシステムなどのことを指し、データを渡すもの(源泉)や受信(吸収)するものを表しています。一般に、データの源泉と吸収(外部要素)は図の端に記入されます。
プロセス
プロセスは入力されたデータを使用可能なデータの出力に変換するものです。プロセスでは記号の内側にプロセスを示す名前を記入します。
データストア
データストアはシステム内のデータを保存する役割をしています。通常、これらのコンポーネントはファイルとして表現されます。
データフロー
データフローはシステム内でデータが転送される際のパイプラインです。図では、これらのコンポーネントは一般に矢印と接続線で表現されます。
データフロー図と UML 図
データフロー図の種類を見る前に、これらの図が UML(Unified Modeling Language)図の違いについて説明したいと思います。
UMLはオブジェクト指向のソフトウェア開発で使われるモデリング言語です。例えば、ソフトウェア開発者はより詳細なプロセスやソフトウェアエンジニアリングがどのように行われるかを説明するためにUML図を使用します。UML 図には公式的に使用されている14種類の図が存在します。
一方でデータフロー図はデータがシステム内をどのように流れるかを示すものです。UML 図に似た特徴がありますが、ソフトウェアロジックの詳細を表現するために設計された図ではありません。
UML 図を使用する場合、データフロー図よりもアクティビティ図の方が便利なケースがあります。これは、データフロー図が単にデータがシステム内をどのように流れるかを図式化したものであるためです。UML アクティビティ図のテンプレートに見られるように、アクティビティの順序はデータがシステ ムを流れる方法と同じように表現されます。
データフロー図の分割
データフロー図は異なる層で構成されています。システムまたはデータの特定の部分に焦点を当てるため図の各層はより深く、より複雑になります。通常、データフロー図のレベルはレベル 0 からレベル 2 で表されますが、特に複雑なシステムではレベル 3 まで深く掘り下げる必要がある場合もあります。
レベル 0
レベル0では、シンプルな形でデータフロー図がシステムの基本的な概要を示し、コンテキストごとにプロセスを配置しています。
レベル1
レベル1の図ではプロセスがより詳細に表現され、プロセスやシステム内の主な機能が記入されます。データフロー図のレベル1の図は、レベル 0 をより分解して説明することができるレベルです。
レベル2
レベル2では、レベル1の図の特定のプロセスにより深く焦点を当て分析をし始めます。レベルを掘り下げるにつれて、図により多くのテキスト情報を追加していきます。このため、多くのシステム設計者はレベル 2 以上の図を設計することはありません。しかし、より複雑なシステムの設計が必要な場合、レベルをさらに掘り下げることもあります。
データフロー図の種類
データフロー図は可視化する必要のあるフローによって「論理データフロー図」と「物理データフロー図」の2種類に分類されます。この2つの図の目的とメリットについて以下で見ていきましょう。
倫理データフロー図
論理データフロー図は、ビジネス活動やプロセスに焦点を当てたものです。この図では「何」を記述し、この指標をグラフィカルな表現で表します。論理データフロー図では、ビジネスが何を行い、何を提供し、何を達成しようとしているのかを記入します。ビジネス上のプロセスとそのプロセスが実行されるために必要な情報やデータを記述します。
論理的なデータフロー図を使用することはビジネスプロセスの流れをマップ化することに非常に便利です。また、ビジネスが持つ、あるいは追加しようと計画している機能について理解することにも役立ちます。
物理データフロー図
物理的なデータフロー図はビジネスシステムの実行段階を図式化したものです。「何」ではなく「どのように」を表現する際に使用されます。データがシステム内をどのように移動し、システムがどのように機能するかがこの図を通して示されます。
このタイプのデータフロー図にはシステムのファイル、ソフトウェア、ハードウェアなどが含まれます。
物理データフロー図と論理データフロー図では、同じデータフローを異なる視点で見ることができます。これらを併用することで、プロセス全体を包括的に理解することができます。
データフロー図の使用事例
データフロー図は、もともとコンピュータシステムにおけるデータの流れを示すために使われていました。しかし現在では、異なる業界でアイデアや設計のさまざまな段階で使用されています。特に、データや情報に大きく依存する企業にとって有益なものです。
以下ではそのデータフロー図の使用事例を見ていきましょう。
ソフトウェア開発
ソフトウェア開発者はソフトウェア開発のコーディング段階に入る前に、データフロー図を用いてソフトウェアの基礎やアーキテクチャを設計します。また、これらの図はシステムがどうのように動作するのか分析することに役立ち、システムの改善を実施するための継続的なシステム分析ツールとして活躍します。
経営管理
経営者は自社を成功に導くための戦略やプロセスを十分に理解しなければなりません。そんな時にデータフロー図は、効率的にプロセスを設計し、プロセスを改善することに効果的なツールです。データフロー図は、ビジネスの日常的なシステムやワークフローの生産性を向上するために使用することができます。
データベース構築
今のデジタル時代では、ほとんどすべてのビジネスがユーザーの情報を管理するために複雑なデータベースを使用しています。データフロー図はこれらのオンラインデータベース内のデータの移動と保存をマップ化し、計画、分析することに役立ちます。サイバーセキュリティとデータ保護が重要な鍵を握る世界において、データフロー図は開発者と企業が従うべき明確な道筋を示します。
データフロー図の作り方
データフロー図とは何かや、この図がどのように使用されているのかを理解したところで、その作り方について見ていきましょう。以下では、Miro のデータフロー図テンプレートを使用して、見やすいデータフロー図を作成するための方法を各ステップを通して解説します。
ステップ1
まずはシステム内の入力と出力をを整理することから始めましょう。各プロセスには少なくとも1つの入力と1つの出力が必要です。これらを記入することで完全なフローを構築することができます。
ステップ2
レベル0の階層からコンテキストに沿って図を作成することでシステムをより深く理解できるようになります。ここで記入される情報は、よりシステムの詳細を掘り下げて情報を説明する必要があるかどうかの判断素材となります。
ステップ3
図をレベル1の図へと掘り下げましょう。ここでは、構造の骨格に肉付けしていきます。レベル 1 の詳細ではビジネス内の特定のシステムに焦点を当てるため、より多くのプロセスとフローを構造に追加していくことになります。上記でご紹介したデータフロー図の記号を使用しましょう。
ステップ4
ステップ3を繰り返し、特定のシステムやフローの詳細を追加したい場合は、そのたびに図のレベルを掘り下げていきます。追加できるレベルの数に上限はありません。ただし、簡単に理解できる図にすることを忘れないでください。作成した図をチームメンバーと共有し、フィードバックや質問、提案をしてもらうようにしましょう。
Miro の作図ツールではデータフロー図作成に便利なツールや図形パックをいつでもご利用いただくことができます。チームでのシステム開発にこれらのツールを活用しましょう!