コンセプトマップとは?書き方や例を簡単に解説
複雑なトピックをどう簡単に説明しようか頭を悩ませたことはありませんか?
新しいソフトウェアの機能の説明やマーケティング戦略など、複雑な情報を簡単な図を使ってよりわかりやすく説明したい時に、コンセプトマップが役立ちます。
コンセプトマップは概念地図とも呼ばれることもあり、概念間の関係性を見える化することに役立ちます。コンセプトマップのアイデアはそれに対応するボックス何に記入され、線は関連するボックスと概念をつなぎ、各線上に記入されるラベルは概念間の関係性を示しています。
コンセプトマップは手書き、または専用のコンセプトマップツールの使用など、様々な方法で作成することができます。
この記事では、コンセプトマップについてやこの図がどのように作られているのかについてご説明します。また、無料で使用できるコンセプトマップテンプレートもこの記事からご利用いただくことができます。情報をうまく他の人に伝えたい時にコンセプトマップを活用しましょう。
コンセプトマップとは?
コンセプトマップは概念とそれに付随する情報との関係性を可視化するためのグラフィカルなアプローチです。コンセプトマップは複雑な思考体系やプロセスを定義、説明、分析することに役立ちます。どんな複雑な情報でも図解することで簡単に理解することができるようになります。
私たち人間は 0.01 秒でイメージからの情報を脳で処理すると言われています。視覚情報に依存する私たちにとってコンセプトマップは非常に効果的な図であると言えるでしょう。
概念どうしがどのように結びついているかをマッピングすることで、情報をわかりやすく理解することができるのです。
コンセプトマップの歴史
コンセプトマップの起源は1970年代に教育者であり研究者でもあるジョセフ・ノバックが、子どもたちが抽象的な考えをどのように学ぶかを研究したことにあります。
ノヴァックとその研究チームは、デビッド・オースベルが提唱した「人はすでに知っていることに新しい考えを取り入れることで学習する」という理論を利用しました。
アウシュベルは「暗記学習」と「意義のある学習」を区別しており、暗記学習では「人々はトピックについて理解していない」、意義のある学習では「人々はそのトピックについてある程度以前に理解しており、関連する新しいアイデアを学ぶための興味を示す」と提唱しています。コンセプトマップはすでに知っている情報に新しい情報を加えることで、「意義のある学習」を促進します。
コンセプトマップの目的
今日でも、コンセプトマップ(概念地図)は非常に人気のフレームワークです。教育現場においてコンセプトマップは、教師が概念間の関係性を視覚的に解説するツールとして役立っています。生徒はコンセプトマップを作成することで、概念やアイデア間のつながりを可視化することができ、情報に対する理解を深め、詳細を記憶することができます。
また、コンセプトマップは企業目標の策定や戦略の分析など、様々な業界で活用されています。例えば、コンプライアンス強化のために既存の手順における専門的知識を文書化したり、新入社員のトレーニングツールとしてコンセプトマップを作成することができます。また、製品開発、マーケティング戦略などにおいてもコンセプトマップを使用することができます。
意外にもコンセプトマップは医療の場でも注目を集めているフレームワークです。医療従事者は現場の改善案や関係各所を明確化するためにコンセプトマップを使用します。病棟の割り当てや治療内容の優先順位付け、作業負荷の整理、ケアプランの作成にコンセプトマップが活躍しています。
コンセプトマップの特徴
コンセプトマップは、単なる図の一種と思われることもあります。しかし、コンセプトマップには主要な概念間の関係を確立するのに役立つ、ある特徴があります。
フォーカスポイント
「フォーカスポイント」とは解決したい課題を記述し、コンセプトマップを作成する時の方向性を示すものです。この質問は、マップの上部または中央に配置され、議論がテーマから大きく外れないようにする役割があります。
コンセプトとつながり
メインテーマや質問から関連する概念をシンプルなボックスやサークルで表します。線は各概念を接続します。アイデア間のつながりを示すために、線にラベルを付けます。ラベルを付けるには、原因、結果、または内容を示すために、通常、動詞を含む簡潔なフレーズを使用します。
プロポジション
プロポジションは概念どうしを結びつけて新しい概念を作り出すものです。プロポジションは動詞で結ばれた2つの概念から形成されます。たとえば「テーブルの作り方」という質問をする場合、「テーブルの脚は、木とその他の材料から作られる」と言うかもしれません。ここでは、「テーブルの脚」と「木や他の材料」という概念が「材料」という単語で結ばれています。
階層構造
通常、コンセプトマップは上から下へ読みますが、左から右へ分岐させることもできます。焦点となる質問と最も一般的または基本的なアイデアは、マップの上部に配置され、下方または外側にマップが展開されていきます。
交差点
「交差点」はコンセプトマップ上に描かれた間接的な概念間のつながりを示すものです。これらの関係を特定することにより、その事実や考え方について新しい発見をすることができます。
レポジトリー
フォーカスポイントを追加した後、アイデアを保存しておくレポジトリーを作成することができます。レポジトリーとは、マップ上でコンセプトマップの情報やアイデアの候補をリストアップするエリアです。リストを作成し、マップに項目を移す前に、大まかなアイデアから詳細なアイデアまで整理することができます。また、コンセプトマップ上でどのように展開するのかを気にせず、レポジトリー使用してアイデアや概念をリストアップする人もいます。
コンセプトマップの例
以下でコンセプトマップの使用事例をご紹介します。
上記のイメージにあるコンセプトマップは階層的に展開したものです。すべてのアイデアは、左側に存在するメインコンセプトから展開されています。
「Current objectives(現在の目標)」はフォーカスポイント(メインの概念)であり、それにつながる概念「includes(含む)」は、フォーカスポイントと 2 つのアイデア「hiring(人員)」と「increase conversion(コンバージョンの促進)」の関係性を示しています。
これらは「Current objective(現在の目標)」と「hiring(人員)」と「increase conversion(コンバージョンの促進)」というプロポジションを形成します。
「hiring(人員)」はさらに 2 つのアイデアに分岐し、そのうちの1つ「データエンジニア」は、別の分岐点にある「Event tracking(イベントトラッキング)」と点線でつながっています。
点線は交差点や依存関係を示しています。この場合「Event tracking(イベントトラッキング)」にはデータエンジニアが必要となります。
コンセプトマップの種類
コンセプトマップにはフローチャートやタイムスケジュール表、ベン図などさまざまな種類があります。コンセプトマップについて覚えておくべき重要な点はコンセプト間の関係に焦点を当てるということです。ここでは、一般的なコンセプトマップの種類をいくつかご紹介します。
フローチャート
フローチャートはプロセスやワークフローのステップを表現するための図です。フローチャートは技術マニュアルやプロジェクト管理においてプロセスを可視化し、改善点の特定やフローの効率化に役立ちます。
段層分類図
段層分類図は中心概念を左または上部に追加し、関連するアイデアを階層的に展開させていくコンセプトマップです。組織図と分類図はこの形式の代表的な例です。
スパイダー図
スパイダー図は蜘蛛の巣のような形状をした図であり、メインアイデアを蜘蛛の巣の中心に配置し、関連するアイデアが蜘蛛の巣上に広がっています。スパイダーマップは中心のアイデアやトピックからサブトピックをブレインストーミングする時の図としてよく使用されます。
システムマップ
システムマップはアイデアどうしの関連性を可視化することに役立つ図です。システムマップは大規模で複雑なシステムにおけるフィードバックループや原因と結果などを示すことを目的としているため、中心となるアイデアが存在しても機能します。社会学や科学、人事においてシステムマップは、組織内で異なるグループがどのように関係し合っているのかを分析する時によく使用される図です。
コンセプトマップのメリット
企業や個人での使用に関係なく、コンセプトマップ(概念地図)はさまざまなシチュエーションで活躍します。コンセプトマップは認識共有ツールとして活躍し、生産性の向上や業務の効率化などに効果を発揮します。
下記でコンセプトマップを使用するメリットについて見ていきましょう。
コラボレーションを促進する
コンセプトマップはグループでブレインストーミングを行い、アイデアを共有することでトピックに対して深く理解することができるようになるコラボレーションツールとして使用することができます。
基本的なビジネスプロセスに役立つ
新入社員が入社する際、ビジネスプロセスを説明するために、コンセプトマップを使用するのが効果的です。これは、新しいメンバーがプロセスを理解し、プロセスにおいての自身の役割をイメージすることに非常に役立ちます。
プロセス最適化へのアプローチを明らかにする
コンセプトマップはプロセスに関わるステップとその間の関係を明らかにすることで、改善や最適化の可能性がある領域を特定することに役立ちます。
ある部門のプロセスが他の部門にどのような影響を与えるかを示す
コンセプトマップは部門を超えたコミュニケーションやコラボレーションを促進させるために必要な情報を提供します。その結果、部門間のボトルネックや認識のズレを解消することができます。
記憶力の向上
コンセプトマップを使用して情報を視覚的に表現することで、より情報を記憶しやすくなります。
新しい概念と古い概念を組み合わせる
コンセプトマップは情報を整理・統合するプロセスにおいてより能動的な学習形態を可能にするツールです。これは、学習者が新しいコンセプトを既存の知識にどのように組み合わせ、それを基にどう新しい知識や概念に構築していけるかを考えることに役立ちます。
創造力と想像力の促進
コンセプトマップは学習者に創造的な思考を促し、一見無関係に見えるアイデア同士を結びつけて、新しい洞察や発見をもたらします。これは、学習者が問題解決のために新しいアイデアやアプローチを生み出したい時に非常に効果的な手法であると言えるでしょう。
コンセプトマップが活躍するケース
コンセプトマップはプレゼンテーションや新しいアイデアの学習、アイデアどうしの関連性を示すための強力なツールです。高等教育から職業訓練、ビジネスプレゼンテーションまで、さまざまな場面で活躍します。
以下でどのようなケースでコンセプトマップが役立つのか見ていきましょう。
トピックの全体像の共有
コンセプトマップは主要なアイデアやサブトピックとそれらの関係を図解化することで、トピック全体像を簡単に可視化することができます。
プロセスの文書化
コンセプトマップはプロセスを文書化するために、プロセスに関わるステップとそれらの間の関係を示すために使用することができます。これにより、プロセスを明確にし、潜在的な問題や改善すべき点を特定することができます。
シャドウプロセス
「シャドープロセス」とは計画内の業務フロー外で発生している作業プロセスのことを指します。コンセプトマップはこのような現象が起きている箇所を特定し、改善することに役立ちます。
プロセスに対する共通認識
コンセプトマップはプロセスやその関係性を示すことで、プロセスに対する共通認識を構築することに役立ちます。
タスクの計画
コンセプトマップはプロジェクトにおいてのタスクの計画にも役立ち、オーナーシップを特定し、プロジェクト内で起こりうる問題や障害物を特定することに役立ちます。
異なるソースの情報の要約を表示
コンセプトマップはスプレッドシートや他のチームからのナレッジなど、さまざまな情報ソースの情報を要約するために使用することができます。個々の情報ソースからは明らかにならないパターンやつながりを特定するのに便利です。
既存の情報を新しい情報に更新する
コンセプトマップを使用すれば、新しいアイデアを既存のアイデアと視覚的に結びつけることができます。これにより新しい情報を既存の知識と組み合わせ、さらなる研究や探求のための潜在的な領域を特定することができます。
コンセプトマップとマインドマップの比較
「コンセプトマップ」と「マインドマップ」はよく同じ意味で使われることがありますが、この 2 つは似て非なるものです。コンセプトマップは既成概念や既存概念の関係を理解することに使用される一方で、マインドマップは中心的なテーマから新しいアイデアや意見をブレーンストーミングすることに使用されるアイデア出しツールです。
コンセプトマップは論理的思考と大きなアイデアを詳細に説明するためのものであり、一般的に多くの枝を持つツリー構造を使用します。コンセプトマップはアイデア間のつながりを示すクラスターを含むこともあります。
マインドマップは連想的にアイデアを展開していき、単語やフレーズだけでなく、画像、引用文、色、異なる線などを使ってメインテーマからアイデアを展開させていきます。
コンセプトマップの作り方
ホワイトボードや紙に付箋を貼ったりなど、コンセプトマップはさまざまな方法で作成することができます。
また、インターネット上にはコンセプトマップの作成を支援するツールも存在します。オンラインツールを使用することで、効率的にコンセプトマップを作成することができ、手書きではできない、簡単な編集作業も実現することができます。
以下のステップに沿ってオンラインでコンセプトマップを作成して見ましょう。
1. 中心のアイデアから始める
コンセプトマップのスタート地点となる概念やアイデアについて考えましょう。これは、解決したい課題や質問、または学びたい新しい概念をコンセプトマップのスタート地点に記入しましょう。
2. 関連概念の追加
メインアイデアに関連するアイデアをマップに追加しましょう。関連する概念やアイデアをすべてブレインストーミングで考えます。これらは、中心的なトピックから放射状に伸びる別の枝として、コンセプトマップに追加することができます。キーワード、フレーズ、画像なども使って、それぞれのコンセプトを表現して見ましょう。
3. メモや他のリソースを見直し、不足部分を補う
このステップではメモを見直したり、概念を追加したり、既存の概念を明確にするのに役立つ他のリソースを確認します。必要に応じて、コンセプトマップに追加の情報を記入しましょう。
4. アイデアをつなげるためのせんとラベルを追加する
アイデアどうしを線でつなげましょう。各線には2 つの概念の関係を要約する短い説明を付けます。異なるグループに属する関連するアイデアを探し、クロスリンクを追加してつなげます。
5. 完成したコンセプトマップを共有する
コンセプトマップが完成したら、それを他の人と共有して、フィードバックをもらいましょう。フィードバックに基づいてマップを更新し、マップの情報を改善できるようにしましょう。